新型コロナウイルスの感染拡大で思わぬ影響が広がっています。「ウッドショック」と呼ばれる木材価格の高騰です。
国際的な木材の価格を示した「シカゴ木材先物価格」を見ると、20年4月1日は259.80ドルでしたが、21年4月23日は1372.50ドルとこの1年で約5倍に価格が上昇し、かつてない異常事態だと言われています。
世界的な「ウッドショック」の影響を受けるのが、大量の木材を使う住宅です。不動産会社「オープンハウス」では、新型コロナウイルスによるライフスタイルの変化とともに、注文住宅の契約も増え、客の数は去年に比べ1.5倍になりました。 好調に見える住宅販売ですが、オープンハウスの担当者によれば、外国産木材のコストが高くなり、輸入量も減って、品薄になっているため、木材価格は3割ほど上昇したといいます。
このためオープンハウスでは、6月以降の新築物件は使用する木材の種類を変更することを視野に入れています。木材の調達に苦しむ住宅メーカーでは中小の事業者を中心に、着工時期の遅れなどをめぐり顧客とトラブルになるケースも相次いでいます。 「ウッドショック」はアメリカから広がりました。引き金となったのは、新型コロナウイルスの感染拡大です。
リモートワークの普及などによって、郊外への移住や一戸建ての需要が高まり、新築やリノベーションの需要が急増。木材価格が高騰しました。新築住宅の販売件数は、新型コロナの感染拡大前を上回っています。さらにワクチン接種の広がりによる景気回復への期待感も、木材価格が高騰する一因とされています。
「ウッドショック」は過去にも2度、起きています。1990年代以降、アメリカで絶滅危惧種のフクロウ保護のため森林伐採の規制が進み、木材の供給不足になりました。また2度目は2008年のリーマン・ショックが起きる直前。好景気で住宅の建設ラッシュとなり、木材の価格が上昇しました。そして、今回は新型コロナの影響です。
世界中の木材がアメリカに集まり、日本にも影響を及ぼしています。住宅に使う木材の7割を海外産に頼ってきた日本。
輸入量が減少したことで、今、国産の木材に注目が集まっています。 東京・西多摩郡にある多摩木材センター協同組合では毎月2回、木材の競りを開催しています。
取材に訪れた4月26日、競りにかけられていたのは地元で伐採された700立方メートル分の木材。スギが半分、ヒノキが3割を占めます。
競りは一見、活況のように見えましたが、訪れた製材業者は「採算を度外視して買っている」「輸入材が買えないから(買い手が)仕方なく国産材に集まっている。だからびっくりするくらいの値段になっている」と語ります。 国産木材の価格は2021年に入って上昇傾向。
多摩木材センターでは1月10日に7260円だったスギ材(3メートル材)の価格が、4月9日には1万1825円と1.5倍以上となっています。中には4月上旬と比べ、3割近く値上がりした木材もありますが、それでも輸入木材が品薄のため、高価格でも引き合いが殺到しているといいます。
競りに訪れていた製材所の社長は「設計事務所も普通に家造りをしていたが、全く材料が揃わず、着工をどうしようかとなっている。
『とにかく今、与えられている物件を建てなければ』と懸命にやっている」と話します。 日本にも影響を及ぼし始めている「ウッドショック」。国産の木材を安定的に確保しようと、4月13日、オープンハウス、ケイアイスター不動産、三栄建築設計の3社は国産木材の利用推進などを目的とした「日本木造分譲住宅協会」を発足しました。ただ、木材不足はしばらく続く見通しです。