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【都内のタワマンなぜ売れる?】
タワマンと呼ばれる超高層マンション、業界としての特段の定義は存在しないが、マンションデータを取り扱う不動産経済研究所では、20階建て以上のマンションを超高層マンション(タワマン)として各種の統計をとっているので、この定義を採用する。
首都圏には現在どのくらいの数のタワマンが存在するのだろうか。
不動産経済研究所の調べによれば、20階建て以上のマンションがなんと925棟も首都圏に存在する。
また2021年以降に日本全国で建設が計画されているタワマンは、現在わかっているだけで280棟10万9908戸あり、そのうち首都圏で173棟8万1825戸にものぼるという。
一般的なイメージとして首都圏にあるタワマンは、港区や中央区、江東区の湾岸エリアに多いが、計画を紐解くと今後は板橋区や豊島区、葛飾区などに多く建てられる予定であることがわかる。
これらの多くが市街地再開発事業と呼ばれる、鉄道駅の駅前の商店街などをまとめて開発する際に建物を高層化してこれをマンションとして分譲するものである。
こんなに多く存在し、これからも数多くの供給が予定されているタワマンだが、実際に販売するとよく売れるのだという。
タワマンは都心居住の進展とともに人気を博した都心型住居の典型だが、分譲価格は近年うなぎ登りになり、湾岸部にある中央区月島や勝どき、江東区の豊洲などのタワマンは条件のよい新築物件だと坪500万円台にもなっている。
新築に引きずられるように中古価格も高騰しており、たしかに2000年代前半から2014年くらいまでにこのエリアのタワマンを買った人は相当の含み益を実現するチャンスが到来していることになっているし、実際に売却して多額の利益を手にした人もいる。
テレビドラマでも演出されているように、タワマンは比較的若いエリートサラリーマンやパワーカップル、富裕層が住むマンションとして描かれることが多いが、購入者の実態はやや異なる。
国内外の投資家に加えて多いのが高齢富裕層なのである。
理由は簡単だ。タワマン購入は相続対策として有効だからだ。
これまでも何度か触れてきたように、相続の際に所有している不動産は、土地部分については路線価評価、建物については固定資産税評価によって課税評価総額が決まる。
現金で持っていれば金額通りの査定になってしまうが、不動産だと時価よりもだいぶ安く評価されるのが、不動産が相続対策として有効であると言われる理由だ。
その中でもタワマンの節税効果が高いのは、タワマンの時価と相続税評価額との乖離が大きい、つまり資産評価額の圧縮効果が高いことによるものだ。
なぜタワマンが節税で効果が高いかといえば、土地の容積率が高く、戸当たりの持ち分が少ないため、路線価評価額との乖離が大きくなりやすいこと、また高層部ほど高い価格設定で売れるので、同じ住戸面積でも高層部ほど土地代の割合が高く設定でき、圧縮効果が高まることによるものだ。
これが、タワマンが売れている、しかも高額帯の部屋ほどよく売れる最大の理由となっているのである。
この対策については、一部の不動産関係者が書籍まで出して大宣伝をしてしまったがゆえに、税務当局の関心をひくところとなり、タワマンの土地建物を一律で相続税評価をせずに建物の階層によって段差をつけるという「節税対策の対策」を施されてしまい、以前ほどの節税効果は封じられてしまったが、効果は薄まったもののいまだに十分な節税効果をもっているのである。
では、いざ相続が発生して節税効果が享受できたとしても、その後売却のタイミングを失うと、節税のために買った高額なタワマンについて回るのが、節税効果を高めるために仕組んだ借入金だ。
時価が簿価を下回るようになれば、借入金の返済は思うようにいかなくなる。
こうなってしまうと借入金元本はつねにまとわりつき、節税効果どころの話ではなくなってしまうのだ。
こうしたタワマンの考えたくない未来が、今後現実のものとなる可能性は意外にありそうだ。
アパート投資での失敗を笑っている場合ではなく、実はタワマン節税も構造的にはまったく同じ問題をはらんでいる。
所詮は今までが安定した、あるいは「いけいけどんどん」のマーケットであったという事実だけが論拠の節税手法なのだ。
不動産の未来が変わるのは、節税王のタワマンにおいても例外ではないのだ。