2024年以降、日本銀行がマイナス金利政策を解除し、すでに2度にわたり政策金利を引き上げました。これを受け、多くの金融機関が変動型住宅ローンの金利を引き上げています。
この状況の中、住宅ローンを借りた人々の選択にはどのような変化があったのでしょうか?
2025年4月に行われた「住宅ローン利用者の実態調査」をもとに、その傾向を見ていきます。
金利が上がっても「変動型」が主流
まず、選ばれた金利タイプを見てみましょう。
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変動型:79.0%(前回調査より増加)
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固定期間選択型:12.2%
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全期間固定型:8.8%
金利上昇局面にもかかわらず、「変動型」を選ぶ人が依然として多くなっています。
借入金利は0.5%超の層が増加
借入金利の分布にも変化が見られます。
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「年0.5%以下」の割合が減少
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「年0.5%超〜1.0%以下」の割合が増加
これは、各金融機関が変動金利を引き上げた影響と考えられます。
返済期間は「超長期化」の傾向
返済期間の内訳は以下のとおりです。
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30年超〜35年以内:45.8%
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35年超〜40年以内:18.4%
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40年超〜50年以内:7.1%
特に「40年超」のローンが増えており、長寿命住宅に対応した「超長期住宅ローン」の利用が広がっています。
超長期ローンの利用が進む理由
金利が上がる中で「超長期ローン」を選ぶ理由としては、月々の返済負担を軽くできることが挙げられます。
例:4,000万円を金利0.6%で借りた場合
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35年返済:毎月約10.6万円
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45年返済:毎月約8.4万円(差:約2.1万円)
ただし、返済期間が長いほど利息が増える点には注意が必要です。
(例:上記ケースでは総返済額が約129万円多くなる)
完済年齢にも注意が必要
たとえば30歳で45年ローンを組むと、完済時は75歳になります。
年金生活に入った後も返済が続くため、繰り上げ返済の計画も重要になります。
金利の「安さ」か「変わらなさ」かが分かれ目
ローンの選択理由を見ても、主に金利が判断基準になっていることが分かります。
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【フラット35】利用者:金利が変わらない安心感(58.4%)
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その他のローン利用者:金利の低さ(61.0%)
つまり、「金利が安い」か「金利が固定されて安心」かが、大きな選択ポイントとなっているのです。
比較検討せずに決めた人が6割超
気になるのは、65.6%の人が1つのローンしか比較していなかったという点。
住宅ローンは家計に大きな影響を与える長期契約です。金利タイプや返済期間、手数料など、複数のローンを比較して、自分に合ったものを選ぶことが重要です。
若い世帯は売却前提で長期ローンを選ぶケースも
「途中で家を売るから、返済期間はあまり気にしない」という若い世帯も増えています。
ただし、返済期間が長いほど元本の減りが遅くなるため、売却時に残債が多く残るリスクがあります。将来を見据えた資金計画とシミュレーションが必要です。